TREKKIE TRAX THE BEST “2011”-2015 トレッキー、はじまりの場所へ行く。

TREKKIE TRAX THE BEST 2012-2015
TREKKIE TRAX
発売中 ¥1,080(税込)
Amazon

11年。同年代の音楽仲間を探していた10代の青年たちが、Bank主催のDJパーティー『U-20』に集ったのをきかっけに結成された東京・渋谷のインターネットレーベル、TREKKIE TRAX。数ある日本のネット・レーベルの中でもとりわけネット空間とリアルとの間に垣根を作らない彼らの活動は、次第にジャンルや国境を越え、世界を舞台にしたものに発展。3月にリリースされたCD作品『TREKKIE TRAX THE BEST 2012-2015』は、これまで世に送り出したアンセムの数々をリリース順に並べたレーベル初のベスト・アルバムになっている。

本作を聴いて改めて思うのは、SNS普及以降の感覚を拡大解釈した「情報過多のエクストリーム」とも言える収録曲の数々が、歴史を置き去りにして絶えずアップデートを繰り返す彼らのホーム=「東京/渋谷」の風景に、どこかリンクしているように感じられること。そこで今回は、サンフランシスコで暮らすSeimeiを除いた主要メンバー(andrew、futatsuki、Taimei:Carpainter)と共に、彼らが活動初期にパーティーをしていた思い出の場所、渋谷の『Bar Sazanami』に続く階段へ。CDの収録曲から時計の針をさらに1年巻き戻して、彼らの記憶の中の「東京・渋谷」から、現在へと繋がるレーベルの歩みを振り返ってもらいました。

「東京の街角に何か新しい建築物ができたなと気づくことがあっても、かつてそこが何だったのかは、もう思い出せはしない。そんなことはあまりに当たり前になりすぎていて、誰も思い出そうとすら考えないのだ。東京とは、そんな街である。」(速水健朗『東京β』)

TREKKIE TRAXからリリースしている人たちは、
たぶんクラブの文脈を通ってないんです。
これまで聴いてきたものもJ-POPだったり、
アニソンだったりロックだったりとごちゃごちゃしてて、
そこから出てくるものはクラブとは違うものになってて。
それを僕らが無理やり
「クラブにコンパイルしてる」って感じなんですよ。

TREKKIE TRAX 3rd Anniversary After MovieTREKKIE TRAX 3rd Anniversary After Movie

――TREKKIE TRAXはもともとバラバラの音楽の趣味を持っていたメンバーが『U-20』で出会ったことで始まりますが、Bar Sazanamiでパーティーを始めたのは結成後すぐですか?

andrew その半年後ぐらいですね。

futatsuki 店主のDJ SazaznamiさんがTwitterで「若いDJ募集」ってつぶやいてて、それをたまたま僕が見つけて「なんかDJできるらしいよ」ってandrewと様子を見にいったんです。そうしたら、「まぁ好きに使ってよ」という感じだったんで。そもそも、当時はDJが出来る場所もあまりなかったんですよね。

andrew 最初、お客さんは5~6人で、出演者とバーの店長と常連さん2人、みたいな感じでした。Sazanamiは玄人向けのバーだったんで、結構緊張しましたね。店長さんもDJに対してストイックな方だし、その頃は18歳ぐらいでバーの雰囲気自体にも慣れていなかったし。まぁ、自分たちでパーティーをするとわちゃわちゃして最終的にあまり関係なくなっちゃったんですけど。

Taimei でも、割と自由にやってた気がする。

futatsuki まあそうね。

andrew とりあえず「楽しいことをしたい」って感じだったんですよ。

――Sazanamiの人たちは、TREKKIE TRAXを最初から見守ってくれた人たちだったんですね。

andrew そうですね。DJの方を呼ぶ時にそのやりかたを教えてもらったりもして。大好きなNeo Tokyo Bassクルーを呼んだ時は本当に緊張しました。ちょっと前まで音楽オタクみたいだった僕らが、渋谷でめちゃくちゃ遊んでる人たちにお願いすることになったんで。

futatsuki 今は大きなパーティーを打ってますけど、ベーシックな部分はここで色々実験して、それを吸収していったのが大きかったんだと思います。今ってトラックメイカーが曲をSoundCloudに上げて人気になるのが主流ですけど、僕らはよりDJなんで。まあ、Taimeiはちょっと違うかもしれないけど、ベースとしてはバーのDJから始まっていて、ラウンジをやって、オープンをやらされる時もあればデイタイムの時もあり、クローズの時もあって……。そういうものがトータルとして活きてると思うんですよ。

――Bar Sazanamiでやったパーティーで、一番楽しかったのは?

andrew Licaxxxと……誰を呼んだっけな。SEKITOVA?

futatsuki Seimei行っちゃう会?

andrew そうだ。Seimeiがアメリカに行っちゃうんで、LicaxxxとSEKITOVAを呼んで、そのお別れ会をやったんです。朝方みんなでB2Bして、常連さんもみんな立ち上がって踊ってくれて。最後はディスコをめっちゃかけて大団円って感じで。

futatsuki セキトバが楽しくてずっと叫んでるみたいな会だったんですよ。

andrew 「ここが日本のパラダイスガラージや~」ってずっと言ってて(笑)。

futatsuki あれは小箱ならではのいいパーティーでしたね。

――規模が大きくなっても、その頃あったパーティーの空気感を残したいということは考えていますか?

andrew 大箱でもその一体感が出る時ってあると思うんですよ。LOUNGE NEOで『BASS GORILLA』(13年開催の第一回)をやった時にそういう雰囲気があって、「自分たちはこの規模でもお客さんを巻き込めるんだ」って思ったんで。なので、それを大きくしていきたいというか。

futatsuki LOUNGE NEOとかでやってる僕らのパーティーって、いわゆるクラブ的なノリじゃないんですよね。時間帯が早いとか、お客さんが若いとかも関係してると思うんですけど、「暗いフロアでテクノが流れてて、みんながお酒を楽しんでる」っていうのとはちょっと違ってて。

――ライヴを観に来てる感覚に近い、という感じですかね?

futatsuki まあ、その中間くらいだと思うんですよ。

――そもそも渋谷は、TREKKIE TRAXを始める前からよく来る場所だったんですか?

andrew DJする前はもう、全然来てないです。それこそ最初の『U-20』も秋葉原だったんで。DJをやる現場が多くて、必然的に渋谷に集まるようになったというか。みんな家も東京じゃなかったりするし。神奈川だったりするんで。

futatsuki 僕らが渋谷をレペゼンし始めたのは、Seimeiがアメリカに行ったことも関係してるんですよ。アメリカから見てニューヨーク、ロンドン……ってみんなが知ってる都市がありますよね。そう考えた時「東京」「渋谷」は知ってる人が多いんで。そういう意味で「俺ら、東京の渋谷でやってるよ」ってわかりやすくするためにレペゼンしてる部分もあるというか。

andrew 当時、「明確なタグがあった方がいい」って話をしたんです。

――よく来るようになってから、どんな街だと思うようになりましたか。

futatsuki なんかごちゃごちゃですよね。「新しい何かが生まれていく」みたいな。

andrew トレンドのスピードが世界的な大都市に近いかなと思うんですよ。そういう意味で活動の拠点にした方がいいって自分たちも思ったのかな、と。

Taimei 伝統がない感じがするよね。

futatsuki 無国籍で。

andrew うん、一番日本っぽくないのかもしれない。

futatsuki さっきの「クラブっぽくないパーティー」の話の延長ですけど、仲良くしてるLAのNEST HQ(スクリレックスが主宰を務めるメディア)界隈のフォトを見ても、僕らのパーティーの雰囲気と同じなんです。「誰も踊ってないし、みんな叫んでる」みたいな。

――ああ、なるほど。

futatsuki この前スクリレックスがそのLAのパーティーにこっそりきた時も、僕らがNEOで盛り上がってる時と結構一致してるんじゃないかなって思ったし。

andrew それこそMasayoshi Iimoriの曲がプレイされたりしてたんで。

――実際、TREKKIE TRAXの曲はエディットの仕方もBPMもすごく現代的です。

futatsuki だからやっぱり、クラブじゃないんですよね。

Taimei インターネットだよね。既存のクラブ・ミュージックというより、SoundCloudを大きくした感じで。

――渋谷はある意味、その象徴と言えるかもしれないですね。色んなものが混ざっていて。

andrew そうですね。たぶん僕らの世代って、インターネットで同時に色んな時代の曲を聴くんです。80年代のニューウェーヴも今のテクノも新譜みたいに聴くんで、全部が新譜っていうか。それがすごくネイティヴに出てるんじゃないかってBooty Tuneのオーナーの方に言われたことがあって。

futatsuki それに、僕らはDJなんで一通りクラブの流れを見てますけど、TREKKIE TRAXからリリースしている人たちは、たぶんクラブの文脈を通ってないんです。「今までインターネットで自分が聞いてきた曲を集め直して発表してる」って感じで。これまで聴いてきたものもJ-POPだったり、アニソンだったりロックだったりとごちゃごちゃしてて、そこから出てくるものはクラブとは違うものになってて。それを僕らが無理やり「クラブにコンパイルしてる」って感じなんですよ。

Taimei それをクラブでかけれちゃうのが渋谷っていうか。

futatsuki まぁ、それが今は東京に限らず世界的に起きているから、フューチャーベースが流行ったり、今までのハウス/テクノ・マナーじゃない音楽が出てきたりしてるのかな、と。

――リリースするアーティストを決める時は、どんなことを考えているんですか。

Taimei 昔と今とではだいぶ違うんですけど、昔は20歳未満がひとつの基準でしたね。

futatsuki 最初は昔からの知り合いやクラブで会った人の曲を出してました。今は日本に限らず、色んな国から毎日デモが送られてくるようになりましたけど、やっぱりデモから採用して出したのはまだ2回しかなくて。アメリカの人を出すにしても、TREKKIE TRAXのことを好きって言ってくれて、連絡を取り合ってるアーティストの作品を出すことが多いですね。

――みんなで話し合うんですか?

futatsuki 1日1000件とか1万件とか、くだらないことから音楽の話、レーベルの話までずっとLINEでやり取りしてるんです。andrewとTaimeiが寝てる間に、僕とSeimeiでしゃべったりとか。

Taimei 朝起きたら未読が700ぐらいになってて、「はぁ……」みたいな(笑)。

andrew そこで共通の意識を保つんですよ。デモとかもそこで一回シェアして、みんなで聴いて。

futatsuki 変な話ですけど、TREKKIE TRAXってクルー感が強い団体なので、僕らに馴染めるかも大事なんです。曲を出して終わりにしたくないというか。たとえば、Masayoshi Iimoriの曲を出してアメリカ・ツアーまで持っていったのも、ただ出すだけじゃなくて、地道にプロモーションをまいた結果で、そういうチームワーク的な話だと思っているんです。だから、リリース以降どんな露出の仕方にするか、いつパーティーに呼ぶか、半年後はどうするかを話し合える人がいい。そういう意味で、最近は仲間として一緒にやっていけるかをより考えたりしますね。音源を出したら300人ぐらいのDJにはプレスをまいて、ニュース・サイトにも書いてもらって、アメリカはアメリカでSeimeiがDMで1通ずつメールを書いて。その結果、Masayoshi Iimoriがアメリカですごく有名になった、というのがやっぱりあるんで。

――インターネットは大事だけど、それだけでは終わらせない、という感じですか?

futatsuki 最近ちょっと思ってることなんですけど、それはインターネットレーベルの多くが終わっていくのを見たからなんだと思います。あと、僕らは基本的にパーティーベースなんですよ。リリースも「この人が(パーティーで)見たい」とか、そういう思いが強いんです。結局、僕らはSNS以降のネットレーベルなんで。

andrew 現実とネットの乖離が少ないというか。僕らは昔みたいに「オフ会」って言わずに、そのまま会っちゃうんですよ。

futatsuki 昨日も今度作品を出すアーティストにオファーをかけて、SoundCloudで音楽を聴いただけなのに、「じゃあ僕、来週大阪行くんで会いましょう」みたいな感じで。インターネットの進化と同時に僕らのコミュニケーションの仕方も変わってきていて、それがネイティヴ化された結果こうなってるのかな、と思いますね。

世界中のDJがTREKKIE TRAXの曲をかけてくれるようになったのは、
本当にローカルなコミュニケーションでしかない。
僕らが仲間内で「この曲いいぜ」って言ったりしてるのと同じことが、
どこでも起きてるのかなって。

――今回リリースされた『TREKKIE TRAX THE BEST 2012-2015』のトラックリストを見ると、そうやってレーベルの人脈が広がっていった歴史のようになっていますね。

andrew そうですね。これはもう、単純にリリース順ですし。

――それぞれの楽曲について振り返ってもらえますか?

futatsuki じゃあまず、1曲目のSeimei & Taimei“Everlasting 2013”。これは、僕はいまだにTREKKIE TRAXのメイン・タイトルだと思っていて、やっぱり「この曲が始まりだな」という感じがするんです。いい曲がいっぱい出てますけど、中でも「レーベルを切り開いてきた曲」というか。2曲目のDJ.DAIさんの“Sampling Shakin' 20 (Musicarus Remix)”は、「レーベル的な動きを始めたい」という時で、身内じゃないところに初めてオファーをかけた曲ですね。

andrew 次の“Funky Beatz”は、2年ぐらい経った頃にTREKKIE TRAXのクルーとしてB2Bをした時に、「TREKKIE TRAXの曲もかけたい」と思っても流れに合う曲がなくて、僕が作った曲です。これだけ元々はフィンランドのTop Billinから出したもので、自分ではすごく変な曲だと思ってて。

futatsuki これは一時期のアンセムでしたね。TREKKIE TRAXにアンセムという概念が生まれたぐらいで。

Taimei 現場でかけれたのって確かにこれだよね。

――その後、TORIENA “I'm dancing on the earth (Carpainter Chip Juke Remix)”とisagen “Throw The Egg”があって……。続くAMUNOA“Cinderella Song”とMasayoshi Iimori“Break It”の2は、きっと今に繋がるレーベルのキーになった曲ですよね。

Masayoshi limori - Break ItMasayoshi limori - Break It

andrew そうですね。15年あたりから海外も視野に入れる新しい動きになってきたんですけど、そのキーがほんとにAMUNOAくんとMasayoshiで。

futatsuki ただ、最初にAMUNOAを出す時は「ポップ過ぎるんじゃないか」って話になったんです。僕らは当時ダブステップやジュークばっかりかけてたんで、最初は「僕らっぽくないかもね」ってことになって。でも、レーベルとしてもう一段変わっていかないとなという話し合いもあってリリースすることになった曲ですね。

andrew Seimeiがアメリカに行って、向こうでどういう音楽が流行ってるかわかるようになったのも大きかったと思いますね。まぁ、この時はまだ彼に現場のコネクションもなかった時ですけど。

Taimei Seimeiは、アメリカに行って最初1年ぐらいは引きこもってたんですよ(笑)。

andrew 向こうに行ったらヒップホップしかかからなくて、四つ打ちはダメ、みたいな感じだったみたいで。ハウスやディスコをかけたら「お前、ブラックをかけろ」って言われて、「いや、ディスコも黒人音楽やろ! チャカ・カーン黒人やろ!」って(笑)。でも、そういうことじゃないってことも徐々に分かってきたというか。2曲ともBPM140ぐらいのハーフのノリでとれる曲で、特にMasayoshiは今のアメリカでかかる感じの曲だったんですよね。

Taimei これは現場に浸透させてから出す、ということを初めてやった曲だったんです。

andrew プロモーションDJやラジオでのプロモーションと、リリースとがルーティンとして合致しきたタイミングで、ここから先は、そういうことも考えるようになりましたね。

――そもそも2人の音楽にはどうやって出会ったんですか?

futatsuki AMUNOAは、僕が友達の乳酸菌と家で飲んでてて、SoundCloudで色々聴いている時に「今これがいいんだよ~」って教えてもらったんです。ラブリーサマーちゃんのリミックスで、最初は「ポップ過ぎるな」って感じだったんですけど、翌日ハッとして「あの曲よかったな」って履歴を辿ったんですよ。で、「AMUNOAっていうやばいやつがいるから、どう?」って。

andrew 最初は現場でかけられないんじゃないかって思ったんですけど、「EP用にこんなのどうですか」って送ってくれた曲がすごくよかったんです! 今フューチャーベースをやってる人ってアメリカではヒップホップやR&Bの影響を受けたものが多いし、日本で流行ってるのはゲーム音楽の影響が大きいものだと思いますけど、AMUNOAくんはIDMやエレクトロニカの要素が強くて、フィールドレコーディングした音を入れたりしていて、最近はもう、フューチャーベースというよりオリジナリティのあるエレクトロニカって感じですよね。

――今回“Cinderella Song”のVIPが収録されていますけど、これも原曲と比べると随分変わっていて驚きました。

Taimei これは普通に「データを送って」って言ったら、違うバージョンが送られてきたんです。

futatsuki 「ちょっと手直しをしたやつを送るねー」みたいな感じだったんですけど、聴いたら「ぜんぜん違うやんけ」って(笑)。「まあでも、作り直したんだから入れましょう。ただし、VIPってつけるからね」という感じでした。

andrew AMUNOAくんは最後の“Sampling Magic”も含めて、今回の作品では予想外の働きをしてくれましたね。

――Masayoshi Iimoriさんは?

futatsuki 出会った頃は謙虚だったのに……(笑)。SeimeiがSoundCloudで見つけたんです。彼がアメリカに行ってトラップを出したいって言い始めた時に、「やばいやつがいるぞ」って。僕らは最初はそんなに興味があったわけではなくて、「こんな人もいるんだね」って感じだったんですけど。

Taimei トラップ自体、僕らもそんなにかけてなかったんですよ、その時は。

andrew 日本ではここ1~2年ですよね。最初は渋谷VISIONとか、LOUNGE NEOでかけても、ハーフのノリではみんなが踊れないというか。最初の1音でびっくりして「わー!」ってなるけど、そこから外国の人みたいに踊る感じでは全然なくて。でもネタがジャスティスのエディットとか、現場でウケそうな曲を作ってくれたので「いっぱいかけよう」って。で、かけながら「ここは荒いからこうした方がいいよ」みたいな話を半年ぐらいしていたら、Masayoshi Iimoriの知名度も地道に上がっていったんです。

futatsuki というか、僕らが上げたんですよ。「Masayoshi Iimori」ってひとり1日3回以上つぶやくって決めたりして。

――やばいですね(笑)。

andrew 「Masayoshi Iimoriはやばい」「Masayoshi Iimoriはやばい」って。もうサブリミナルで。

Taimei それで名前だけ知ってる人が急に増えたんです。「でも、結局何それ?」っていう(笑)。

futatsuki 次のリリースになったmatra magicはもともとShoujo名義でハードコアを作ってて、でもジュークをやりたくてmatra magicを始めたんですよね。で、日本に来るって言ってたんで、「だったら僕らで呼ぶし、それに合わせてEPを出そう」という話になって。結果めちゃくちゃいいものができて、TREKKIE TRAXで一番バズった曲になりました。ウェーヴ・レーサーみたいなフューチャーベースのトップ・アーティストも、SpazzkidやGiraffageもこぞって反応してくれて。

Wave Racer - Flash Drive (feat. B▲by)Wave Racer - Flash Drive (feat. B▲by)

Spazzkid - Spazzkid - "Truly" feat. Sarah Bonito

futatsuki Snail’s Houseは、Masayoshi Iimoriの推薦です。もともと彼の友達で「やばいやつがいるよ」って聞いて様子うかがいでLINEをしたら、そのまま即決で!

Snail's House - My StorySnail's House - My Story

――ここで初めて、TREKKIE TRAXにKawaii要素が入ってきますね。

futatsuki そうですね。これはすごく反響があって、「Kawaii Future Bass」として色んなラジオやメディアが取り上げてもらいました。ポップすぎたので僕ら的には悩んだんですけど、聴いてくれるみんなはそれを待っていたというか。だからよかったな、と思いますね。

Taimei 次の“Journey To The West”は、アルバムの中でも個人的に一番好きな曲ですけど、(この曲が収録されている)『Out Of Resistance』自体もでかかったと思うんですよ。TREKKIE TRAXにとって初の全国流通のCDアルバムだったんで。そのCDの曲は絶対入れようって話になって、中でも僕が一番好きなこの曲を選びました。

Carpainter - Out Of ResistanceCarpainter - Out Of Resistance

andrew この時はCDリリースと合わせてツアーをやろうというのがあって。

futatsuki 自分たちで地方の知り合いに色々メールを出して、「Carpainterのこういうツアーをやるんですけど」って3月ぐらいから準備し始めて、韓国を合わせて12ヵ所回りました。この時までは彼ってマルチネのイメージが強くて、「マルチネのファンがCarpainterを見にくる」みたいな感じだったんです。“Fancy Night Step”(13年の『Double Rainbow』収録。マルチネからのリリース)をかけると盛り上がるけど、それ以外は傍から見ると曲に反応するって感じではなかったというか。でもこのCDを出したことで、“Journey To The West”の最初の太鼓が鳴った瞬間に「わー!」って反応が来るようになって。TREKKIE TRAXのCarpainterになったというか。

Taimei 13年に“Fancy Night Step”を出して、色んなDJの人たちがかけてくれるのはすごく嬉しかったんですけど、その時にガラージというより「ジャンル:インターネット」としてかける人が多くて。それで14年は「自分はガラージ・アーティストやぞ」って押し出していったんです。でもそれをやりすぎた結果、このままだと「ガラージの人になってしまう」と思って。それで15年の目標として、ジャンルどうこうではない「Carpainterの曲」を作ろうと思ったんです。ルーツのデトロイト・テクノを入れて、「自由にやっていくんだ」って宣言した曲で。どのジャンルとも言えない感じが一番うまく出たのはこの曲だと思うんですよ。

futatsuki 地方でもほぼ満員ぐらい入ってました。その前の年のツアーはお客さんが10~15人とかだったんで、それが1年間で何倍にも増えて盛り上がるようになったのがよかったですね。

――次はCola Splashの“Curry Drinker”です。

andrew Cola Splashはもともと彼がSoundCloudに1~2曲上げてた時に、Seimeiが友達から紹介してもらって見つけてきたんです。で、僕らも聴いて「ヤバいな」って。その時はサンディエゴのアメリカ人って書いてあるけど誰かの変名っぽいし、全容が分からな過ぎたんですよね。でも、その後も曲が上がるたびに、どんどんヤバくなってきて。

futatsuki 結局、TREKKIE TRAXの周年のパーティーでColaが見たいからEPを出すことになったんです。その結果“Curry Drinker”が生まれて、いざ周年に呼んでみたら、あれは本当におかしい盛り上がりだったよね。間違いなくTREKKIE TRAX史上、一番。 

Taimei LOUNGE NEO史上一番ぐらいだよね。

andrew NEOの柵が初めて壊れた(笑)。それ以降、LOUNGE NEOは「柵が壊れるぐらい盛り上がったパーティー」っていう打ち出し方をしてるんですよ。Twitter上で「盛り上がりすぎて柵が壊れてるぞ!」みたいな。それで、だんだん柵が壊れやすくなってきて……。流石に最近は、壊れすぎて経費がやばいっていう。

――はははは。

futatsuki でもそうやって盛り上がったCola Splashの動画を撮ってた人がいて、それを僕がRTしたらDjemba Djembaから「なんなんだ! この曲は!」って連絡がきて。そうしたら勝手にリミックスが作られていました。

andrew それで富山の帰りに新幹線で寝て起きて携帯を見たら、Djemba Djembaがフェスでこのリミックスをかけてる映像が上がってて、数万人規模のお客さんが踊っているという。すぐにみんなを起こして「おい!」って(笑)。 

futatsuki 今年の本国のULTRAでもかかったらしくて、Masayoshi Iimoriに次ぐ話題の曲になりました。

――そうやって自分たちの知らないところでも盛り上がることが増えている現状については、どんな風に感じているんですか?

andrew でも、実感はないですよね。

futatsuki だから、見たいんですよ。(本国の)ULTRAに行って、実際にかけてくれるところを見たい。

andrew 最近は僕らをサポートしてくれているアーティストを日本に呼んだりもしてるので、その人のセットでかかったりすると、ちょっと実感は湧いてきます。ニーナ・ラスベガスが自然にTaimeiの曲をかけてくれたり、ジョセフ・マリネッティ(ハドソン・モホークやラスティーを輩出したラッキーミー所属)も自然にかけてくれて、「一流のDJが流れでかけてくれるんだな」って思ったり。

TREKKIE TRAX Pres. Nina Las Vegas In Tokyo After MovieTREKKIE TRAX Pres. Nina Las Vegas In Tokyo After Movie

futatsuki ニーナに関してはDJ上手すぎワロタwwwみたいな感じでした。

――世界も含めて、いいものを作れば広がっていくみたいな感覚もあったりしますか?

futatsuki 「広げ方を学んだ」って言ったら変なんですけど、どうしたらそういうDJがかけてくれるかが分かってきたという感じです。だから、そこは地道な営業の成果だと思っていて。Djemba Djembaみたいな変なパターンもありますけど、やっぱり世界中のDJがかけてくれるようになったのは、本当にローカルなコミュニケーションでしかないと思うんですよ。僕らが「この曲いいぜ」って仲間内で言ったりしてるのと同じことが、どこでも起きてるのかなって。

――インターネットで世界が広くなった、という単純な話でもないんですね。

futatsuki インターネットを通して色んな人と「コミュニケーションが取れるようになった」ということでしかなくて、実際のコミュニケーション自体は変わらないと思うので。

andrew 結局、連絡を取らないと始まらないですし。

Taimei だから、拡張だよね。

futatsuki それもあって、最近は僕らも意識して海外に発信するようになっていて、「日本で今かけてるよ」みたいなのを動画で送ると、あっちから逆に「今流れてるよ」って送られてくるようになったり、今後TREKKIE TRAXが出す曲のプロモパックを作って感想を聞くと、あっちからまだ出てない曲が送られてきて「俺らも日本でかけるよ」ってなったり。結局はそういう、本当に地道なコミュニケーションなんですよね。もちろん、曲がやばいからかかるというのもありますけど、そこの規模がだんだん大きくなってきたおかげで、色んなフェスでかかるようになった部分はあるはずで。その辺りはSeimeiがうまくやっていて、アーティストごとに書くメールの文章を変えたりして、彼がまめにコミュニケーションを取ってる感じですね。

アメリカに向けて日本の音楽を発信し続けてきて、
今度はもうちょっと大きなかたまりになってもいいのかなって思うんです。
僕らが2年前とか3年前とかに抱えてたのと同じ問題を近くの国で抱えてる
でも素晴らしいアーティストをグローバルに活躍させてあげたい。

――Seimeiさんはどんな人なんですか? 

futatsuki 寂しがりやでかまってちゃんなんです。で、それを誰に対しても行なうから、結果ニーナ・ラスベガスに対しても行なってしまった、みたいな(笑)。でも、僕らがベース・ミュージック・シーンで上の人たちと知り合えたのは、彼がそのテンションで話しかけた結果なんですよ。

andrew だから、世界に行っても、Bar SazanamiでNeo Tokyo Bassのクルーに「ファンです! 出てくれませんか」って言ってたのと全然変わってなくて。

futatsuki RBMAか何かの企画の時にたまたまSeimeiがサルヴァに会う機会があって、一対一で話した結果、あいつが「俺たちは日本で頑張ってて、あんたに憧れてカリフォルニアに来たんだよ」って泣き崩れて……。

andrew それもう、言ってることは8割ぐらい盛ってるよね(笑)。

futatsuki まあでも、その結果サルヴァのメールアドレスをゲットして、Carpainterのデモを送ったら「この曲ヤバいな」って言ってくれたりして、「あの人レベルでもそれか!」っていう。たぶんSeimeiは何も考えてないんで、失礼も絶対あると思うんですけど、それ以上の情熱があるから人間的に許してしまえるってことなんだと思います。

Salva - BeachedSalva - Beached

andrew だからまあ、「結局は人なんだな」って感じですよね。

――MAVIS BACONとsleepwellはどうだったんですか?

Sleepwell - Never EverSleepwell - Never Ever

andrew Sleepwellくんはデモを送ってきてくれたんですよ。

futatsuki クラブにほぼ行ったことがないって言ってて、じゃあいっぱい呼ぶから作品を出そうよ、みたいな感じで始まって。

andrew MAVIS BACONも同じで、もともとユニットだったんですけど、その中でフューチャーベースを出すって話になって。ライヴがほんと良かったんです。現場でのロック力とかもすごくあって。何より同い年で一緒にパーティーできるのが大きかったんで、一緒に遊んだりするようになって。ふたりとも曲調が似てたのもあって、一緒に作ったらすごくいいなという感じで。

――その後はin the blue shirtの曲もリリースすることになりましたね。ますますリリースが粒揃いになってきたというか。

in the blue shirt - toward morningin the blue shirt - toward morning

futatsuki これも僕が乳酸菌と家で飲んでて……。当時予算があるパーティーを受注していたので、彼をいきなり東京に呼ぼうって話になりました。なのでリリースも何もなく東京に呼んだんです。

andrew それまで関西に行った時に話したりもして、普通に友達だったというのもあるんで。

futatsuki 彼は友達だし、僕らのパーティーに欠かせない仲間なんで、リリースは1曲ですけど今回のCDにも入れました。今日も一緒に家で遊んでたんですよ。それで「アリムラ(in the blue shirt)もインタビュー行く?」って訊いたら、「人のは見たくないから、自分のだったらいいよ」って帰っていきました(笑)。アリムラについてまとめると、僕らが現場でわちゃわちゃしたいっていう気持ちが一番強く現れた結果、僕たちが何故か大好きになってしまったアーティストです。

andrew Lolica TonicaはKy7ie.くんの方はLOUNGE NEO周りでDJをやってて、個人の曲も作ってて、僕はたまに喋ってたんです。でもヒイラギペイジくんと一緒に作るようになって音がだいぶ変わって。それをSeimeiがすごくいいって言って。

Lolica Tonica - Make me FeelLolica Tonica - Make me Feel

futatsuki 僕も1曲目でピンときて、Masayoshi Iimoriのプロデュースがうまくいってたんで、彼らをゼロからプロデュースしようということになったんです。会った時はLolica Tonicaっていう名前もなかったんですよ。前の名前があって、「いやそれはダサイでしょ」って言ったりとか。Lolica Tonicaは出る前から現場でめっちゃかけたよね? 最初のイントロが流れたら「わー」ってなるぐらいになってました。彼らはアーティストとしてやっていきたいという気持ちが強くて、すごく自主的にやってくれるんですよ。で、Zekkの場合は、僕は15年の4月ぐらいからだと思ってるんですけど、韓国のフューチャーベース・シーンがすごく盛り上がってきて。

andrew AireくんやNorくんを含めた17歳、18歳ぐらいのプロデューサーがばっと出てきて。Ujico*(Snail's House)くんたちと同い年の、その4~5人がグループみたいに見えたんです。

futatsuki 中でも、Zekkはハードコアなんですよね。フューチャーベースを作ってるけど、もうハードコアが作りたくて仕方がないという感じが見え隠れしてて。送られてきたデモも「これただのハードコアやんけ」っていう(笑)。現場っぽさもあったし、音楽的にもTREKKIE TRAXのニュアンスに合うなあって。で、SeimeiとCarpainterが韓国でツアーをやった時に会って、一緒に喋ったりして。

Taimei Zekkは音楽を作るのが楽しくてしょうがない男子高校生って感じでした。未成年なんでクラブは入れないから、行ける時は行くという感じで。仲間が10人くらいいて、みんな仲良くて、男子高みたいな感じなんですよ。

andrew なんか、TREKKIE TRAXの結成前みたいなね。

futatsuki で、Zekkに「日本でライヴも出来るから、TREKKIE TRAXからリリースしよう」って言ったら、最初「行きません。そんなの怖くてできません」みたいな返答がきたんです(笑)。

andrew 彼はほんとに未成年で、親とかも「まだ学生じゃないか」みたいな感じだったんですよ。

Taimei DJもやったことがなかったみたいで。

futatsuki ただインターネットに曲をアップしていたら、僕らがつかまえて「とりあえず日本こいや」みたいになったという(笑)。それで「DJをやったことなんですけど、大丈夫ですか? お父さんに聞いてみます」って。それで彼が初めてDJしたのがNEOだったんですよ。

Taimei めっちゃ盛り上がったよね。結局ハードコアをかけて。

futatsuki 国に関係なくインターネットの力で隣国の人を呼んでみたら、結果すごいことになったという。「僕ら自身が現場で見たいからDJしてもらおう」ってことの進化した形ですね。「韓国だったら大阪から来るより飛行機代も安いぞ」って(笑)。

――それからblackglassGさんの“You Gotta Be Hard feat. AMUNOA”、Ampsさんの“Cross Channel”と続いて、TREKKIE TRAXの楽曲だけをサンプリングして作った“Sampling Magic”で最後です。

futatsuki これは、僕らだけでCDリリースに向けて動いていた頃に、AMUNOAから急に「作ったよー」って送られてきて「何これ、やばいぞ」っていう。それで、「僕ら、実は今CDを作ってて……」と。

Taimei 40~50曲ぐらい使ってるよね。

――たまたまタイミングが合うのもすごいですよね。

andrew そうですね。こんなのもう、ベスト盤に入れざるを得ない(笑)。

futatsuki おかげでバシッとアルバムが締まりました。

――今回の『TREKKIE TRAX THE BEST 2012-2015』の中で、それぞれのお気に入りの曲を教えてもらえますか?

futatsuki Taimeiは自分の曲?

Taimei まあそうですね。アルバムをCDで出したっていうこともあるし、音楽を作る指針として「色んなことをやる」ってことを打ち出した曲なんで。

futatsuki andrewは“Funky Beatz”とか?

andrew でも流れで見ると、TORIENAちゃんのCarpainterリミックスも、最初にTREKKIE TRAXのクルーセットで地方巡業をした時を思い出しますね。パーティーは楽しかったですけど、移動がハードで大変だったなぁとか。

futatsuki じゃあ僕はZekkですね。日本でリリースされたCDですけど、「しっかり世界中のアーティストが入っているよ!」ってことで! matra magicもそうですけど、グローバルなレーベルな感じがして!

andrew アジアを切り開くっていうのもあるしね。

――世界を見るようになって、繋がりが広がってきたからこその出来事ですよね。

futatsuki 僕たちは今までアメリカに向けて日本の音楽を発信し続けてきましたけど、もうちょっと大きなかたまりになってもいいのかなって思うんです。今までアジアのクラブ・ミュージック・シーンって何が起きてるのかわからなかったけど、TREKKIE TRAXは幸いそこを打破しつつあるのかなと思っていて。普通にあっちのフェスでも流れたり、あっちのメディアにも載るようになってきてるので。じゃあ次の僕らの役割は、僕らが2年前とか3年前とかに抱えてたのと同じ問題を近くの国で抱えてる、でも素晴らしいアーティストをグローバルに活躍させてあげることなのかなって。それで韓国のZekkを出したり、中国のConrankを出したり、今後も中国のラッパーのEPを出したりして、色々探っていきたいな、と。特に中国はネット規制がすごいんで、FacebookもLINEもTwitterも使えなくて違法に発信してるわけです。でも僕らは中国ツアーをやったおかげで、あの国で何が起きているのかも見えてきたし、コンタクトが取れなかったところとも繋がれるようになって。だから今、そいつらを出そうという話をしているんです。それってお互いwin-winだと思うし、そういう使命感も込みでアジアは面白いなあと。

――欧米から見たアジアという意味でも、視線が変わってきているのを感じますか?

futatsuki 日本はそうですね。EDMカルチャーがここ2年ぐらいでぐっときたおかげで、僕たちが見たかったアーティストが毎週来るような状態になっていて。それってあっち側から見ても、日本がマーケットとして機能し始めたってことだと思うので。

andrew その時に、僕らは日本で何が起きているのかをちょっと見えやすくすることは出来たんじゃないかなとは思っていて。でも、それが韓国や特に中国だと難しい部分もあるので。それなら自分たちを介して一緒にできたらいいな、って。

futatsuki 環境が変わってきたおかげでできることも増えたんで、じゃあそれを最大限やろうってことなんですよ。そうやって動いてきた結果、レーベルもここまで成長してきたので。

――活動が広がってきた今、渋谷は自分たちにとってどんな場所になっていますか。

andrew うーん。ホームではあるけど、どうなんでしょうね?

futatsuki たとえば、僕らはLAのパーティーに憧れるわけです。僕らの見たいアーティストが沢山いて、「こんなに盛り上がってるんだな」というのも可視化されて。でもそれは、あっち側に発信することも可能だということなんで。だったら、今渋谷がヤバいことになってるのを僕らは伝えるべきだし、海外のアーティストも沢山呼んだりして、日本のクラブ・シーンをもっと見えるようにしていきたい。その時に、渋谷っていう看板は必要だと思うんですよね。スクランブル交差点を見たら、だいたいみんな分かるわけで。

andrew まぁでも、自分たちが一番DJしていて、ずっといる場所でもあるよね。

Taimei CDのジャケも、それ(渋谷のスクランブル交差点)だし。

futatsuki 渋谷でDJを始めてなかったら、TREKKIE TRAXはこういうレーベルにはなってないとは思うんですよ。六本木でやってたらもっと違うじゃないですか、きっと。

andrew 今はもうやってなかった可能性すらあるでしょ、それは。

futatsuki そういう意味でも、渋谷はいいですね、器が大きくて。「より多くの人に音楽を届ける」というのはレーベルの創設時から変わらないテーマとしてあって、今、その規模感がどんどん大きくなっている感じなんです。日本にはまだまだ素晴らしいアーティストが沢山いるので、理想としては、彼らがうまく活動していけるようにしたい。今は世界でやっていることもあって、これまでにはなかったビジネスモデルを作れる可能性も、ちょっとはあると思いますし。僕らはそれを、自分たちの信念のあるものでなんとかしたいんですよ。

――音楽にまつわる諸々もちょうど転換期で、色んなものが変わっているところですし。

futatsuki そういう意味でもチャンスはあるかなと思うので、そのチャンスを生かして、いい形にしていきたいですね。