TREKKIE TRAX 3rd Anniversary After Movie
――TREKKIE TRAXはもともとバラバラの音楽の趣味を持っていたメンバーが『U-20』で出会ったことで始まりますが、Bar Sazanamiでパーティーを始めたのは結成後すぐですか?
andrew その半年後ぐらいですね。
futatsuki 店主のDJ SazaznamiさんがTwitterで「若いDJ募集」ってつぶやいてて、それをたまたま僕が見つけて「なんかDJできるらしいよ」ってandrewと様子を見にいったんです。そうしたら、「まぁ好きに使ってよ」という感じだったんで。そもそも、当時はDJが出来る場所もあまりなかったんですよね。
andrew 最初、お客さんは5~6人で、出演者とバーの店長と常連さん2人、みたいな感じでした。Sazanamiは玄人向けのバーだったんで、結構緊張しましたね。店長さんもDJに対してストイックな方だし、その頃は18歳ぐらいでバーの雰囲気自体にも慣れていなかったし。まぁ、自分たちでパーティーをするとわちゃわちゃして最終的にあまり関係なくなっちゃったんですけど。
Taimei でも、割と自由にやってた気がする。
futatsuki まあそうね。
andrew とりあえず「楽しいことをしたい」って感じだったんですよ。
――Sazanamiの人たちは、TREKKIE TRAXを最初から見守ってくれた人たちだったんですね。
andrew そうですね。DJの方を呼ぶ時にそのやりかたを教えてもらったりもして。大好きなNeo Tokyo Bassクルーを呼んだ時は本当に緊張しました。ちょっと前まで音楽オタクみたいだった僕らが、渋谷でめちゃくちゃ遊んでる人たちにお願いすることになったんで。
futatsuki 今は大きなパーティーを打ってますけど、ベーシックな部分はここで色々実験して、それを吸収していったのが大きかったんだと思います。今ってトラックメイカーが曲をSoundCloudに上げて人気になるのが主流ですけど、僕らはよりDJなんで。まあ、Taimeiはちょっと違うかもしれないけど、ベースとしてはバーのDJから始まっていて、ラウンジをやって、オープンをやらされる時もあればデイタイムの時もあり、クローズの時もあって……。そういうものがトータルとして活きてると思うんですよ。
――Bar Sazanamiでやったパーティーで、一番楽しかったのは?
andrew Licaxxxと……誰を呼んだっけな。SEKITOVA?
futatsuki Seimei行っちゃう会?
andrew そうだ。Seimeiがアメリカに行っちゃうんで、LicaxxxとSEKITOVAを呼んで、そのお別れ会をやったんです。朝方みんなでB2Bして、常連さんもみんな立ち上がって踊ってくれて。最後はディスコをめっちゃかけて大団円って感じで。
futatsuki セキトバが楽しくてずっと叫んでるみたいな会だったんですよ。
andrew 「ここが日本のパラダイスガラージや~」ってずっと言ってて(笑)。
futatsuki あれは小箱ならではのいいパーティーでしたね。
――規模が大きくなっても、その頃あったパーティーの空気感を残したいということは考えていますか?
andrew 大箱でもその一体感が出る時ってあると思うんですよ。LOUNGE NEOで『BASS GORILLA』(13年開催の第一回)をやった時にそういう雰囲気があって、「自分たちはこの規模でもお客さんを巻き込めるんだ」って思ったんで。なので、それを大きくしていきたいというか。
futatsuki LOUNGE NEOとかでやってる僕らのパーティーって、いわゆるクラブ的なノリじゃないんですよね。時間帯が早いとか、お客さんが若いとかも関係してると思うんですけど、「暗いフロアでテクノが流れてて、みんながお酒を楽しんでる」っていうのとはちょっと違ってて。
――ライヴを観に来てる感覚に近い、という感じですかね?
futatsuki まあ、その中間くらいだと思うんですよ。
――そもそも渋谷は、TREKKIE TRAXを始める前からよく来る場所だったんですか?
andrew DJする前はもう、全然来てないです。それこそ最初の『U-20』も秋葉原だったんで。DJをやる現場が多くて、必然的に渋谷に集まるようになったというか。みんな家も東京じゃなかったりするし。神奈川だったりするんで。
futatsuki 僕らが渋谷をレペゼンし始めたのは、Seimeiがアメリカに行ったことも関係してるんですよ。アメリカから見てニューヨーク、ロンドン……ってみんなが知ってる都市がありますよね。そう考えた時「東京」「渋谷」は知ってる人が多いんで。そういう意味で「俺ら、東京の渋谷でやってるよ」ってわかりやすくするためにレペゼンしてる部分もあるというか。
andrew 当時、「明確なタグがあった方がいい」って話をしたんです。
――よく来るようになってから、どんな街だと思うようになりましたか。
futatsuki なんかごちゃごちゃですよね。「新しい何かが生まれていく」みたいな。
andrew トレンドのスピードが世界的な大都市に近いかなと思うんですよ。そういう意味で活動の拠点にした方がいいって自分たちも思ったのかな、と。
Taimei 伝統がない感じがするよね。
futatsuki 無国籍で。
andrew うん、一番日本っぽくないのかもしれない。
futatsuki さっきの「クラブっぽくないパーティー」の話の延長ですけど、仲良くしてるLAのNEST HQ(スクリレックスが主宰を務めるメディア)界隈のフォトを見ても、僕らのパーティーの雰囲気と同じなんです。「誰も踊ってないし、みんな叫んでる」みたいな。
――ああ、なるほど。
futatsuki この前スクリレックスがそのLAのパーティーにこっそりきた時も、僕らがNEOで盛り上がってる時と結構一致してるんじゃないかなって思ったし。
andrew それこそMasayoshi Iimoriの曲がプレイされたりしてたんで。
――実際、TREKKIE TRAXの曲はエディットの仕方もBPMもすごく現代的です。
futatsuki だからやっぱり、クラブじゃないんですよね。
Taimei インターネットだよね。既存のクラブ・ミュージックというより、SoundCloudを大きくした感じで。
――渋谷はある意味、その象徴と言えるかもしれないですね。色んなものが混ざっていて。
andrew そうですね。たぶん僕らの世代って、インターネットで同時に色んな時代の曲を聴くんです。80年代のニューウェーヴも今のテクノも新譜みたいに聴くんで、全部が新譜っていうか。それがすごくネイティヴに出てるんじゃないかってBooty Tuneのオーナーの方に言われたことがあって。
futatsuki それに、僕らはDJなんで一通りクラブの流れを見てますけど、TREKKIE TRAXからリリースしている人たちは、たぶんクラブの文脈を通ってないんです。「今までインターネットで自分が聞いてきた曲を集め直して発表してる」って感じで。これまで聴いてきたものもJ-POPだったり、アニソンだったりロックだったりとごちゃごちゃしてて、そこから出てくるものはクラブとは違うものになってて。それを僕らが無理やり「クラブにコンパイルしてる」って感じなんですよ。
Taimei それをクラブでかけれちゃうのが渋谷っていうか。
futatsuki まぁ、それが今は東京に限らず世界的に起きているから、フューチャーベースが流行ったり、今までのハウス/テクノ・マナーじゃない音楽が出てきたりしてるのかな、と。
――リリースするアーティストを決める時は、どんなことを考えているんですか。
Taimei 昔と今とではだいぶ違うんですけど、昔は20歳未満がひとつの基準でしたね。
futatsuki 最初は昔からの知り合いやクラブで会った人の曲を出してました。今は日本に限らず、色んな国から毎日デモが送られてくるようになりましたけど、やっぱりデモから採用して出したのはまだ2回しかなくて。アメリカの人を出すにしても、TREKKIE TRAXのことを好きって言ってくれて、連絡を取り合ってるアーティストの作品を出すことが多いですね。
――みんなで話し合うんですか?
futatsuki 1日1000件とか1万件とか、くだらないことから音楽の話、レーベルの話までずっとLINEでやり取りしてるんです。andrewとTaimeiが寝てる間に、僕とSeimeiでしゃべったりとか。
Taimei 朝起きたら未読が700ぐらいになってて、「はぁ……」みたいな(笑)。
andrew そこで共通の意識を保つんですよ。デモとかもそこで一回シェアして、みんなで聴いて。
futatsuki 変な話ですけど、TREKKIE TRAXってクルー感が強い団体なので、僕らに馴染めるかも大事なんです。曲を出して終わりにしたくないというか。たとえば、Masayoshi Iimoriの曲を出してアメリカ・ツアーまで持っていったのも、ただ出すだけじゃなくて、地道にプロモーションをまいた結果で、そういうチームワーク的な話だと思っているんです。だから、リリース以降どんな露出の仕方にするか、いつパーティーに呼ぶか、半年後はどうするかを話し合える人がいい。そういう意味で、最近は仲間として一緒にやっていけるかをより考えたりしますね。音源を出したら300人ぐらいのDJにはプレスをまいて、ニュース・サイトにも書いてもらって、アメリカはアメリカでSeimeiがDMで1通ずつメールを書いて。その結果、Masayoshi Iimoriがアメリカですごく有名になった、というのがやっぱりあるんで。
――インターネットは大事だけど、それだけでは終わらせない、という感じですか?
futatsuki 最近ちょっと思ってることなんですけど、それはインターネットレーベルの多くが終わっていくのを見たからなんだと思います。あと、僕らは基本的にパーティーベースなんですよ。リリースも「この人が(パーティーで)見たい」とか、そういう思いが強いんです。結局、僕らはSNS以降のネットレーベルなんで。
andrew 現実とネットの乖離が少ないというか。僕らは昔みたいに「オフ会」って言わずに、そのまま会っちゃうんですよ。
futatsuki 昨日も今度作品を出すアーティストにオファーをかけて、SoundCloudで音楽を聴いただけなのに、「じゃあ僕、来週大阪行くんで会いましょう」みたいな感じで。インターネットの進化と同時に僕らのコミュニケーションの仕方も変わってきていて、それがネイティヴ化された結果こうなってるのかな、と思いますね。