もしもあなたがポップ・ミュージックの熱心なファンだとしたら、ぜひこの4人の音楽にも触れてもらいたい。チルウェイヴに影響を受けてスタートした前身バンドSlow Beachを母体にして14年に結成されたLUCKY TAPES。彼らがこの新バンドで鳴らすのは、ソウル/ファンクの高揚感を飲み込んだ、王道のポップ・ミュージック。8/5にはデビュー・アルバム『The Show』のリリースも決定。恐らくこの作品は、たとえばceroの新作『Obscure Ride』と同じように、日本のインディ・シーンの豊かな魅力を伝えてくれる作品のひとつになるんじゃないだろうか。
そこで今回は、初級編。現時点で唯一の正式なリリース曲となる“Touch!”のMV制作に潜入。“Touch!”までの変化を訊いたメンバー4人の取材と、MVでコーラス役を演じた瀬戸かほさんを加えた対談との2本立てで、LUCKY TAPESにとってのポップ・ミュージックに思いを巡らせてもらいました。使用している写真は、MV撮影当日のもの。チルウェイヴからスタートした彼らがポップの高揚感に真正面から向き合ったこの曲のMVからは、今バンドが大切にしていること=リスナーを巻き込んで多くの人と音楽をシェアする喜びが、ストレートに伝わってくる。
さぁあなたも、彼らと一緒に非日常のパーティーへ。優れたポップ・ミュージックはいつだって、何気ない日常さえもきらびやかなダンスフロアに変えるのだ。
シックのナイル・ロジャースがダフト・パンクの“Get Lucky”に参加して
そこにマイケルのアルバムも出て……
黒い音楽にポップスを乗せたものが
日本でも受け入れられるんじゃないかなって感じたんです
――みなさんに話を訊かせてもらうのは今回が初めてですが、実は海さんだけ、一度Twitterでやりとりをしたことがあるんです。パッション・ピットの2作目(12年)が出る頃……海さんがソロ名義で曲を作っていた時期なので、きっと覚えていないと思いますが。
Kai Takahashi - Party Talk (ソロ名義での14年作)
高橋海(Vo, Key) えっ、パッション・ピット?! まさかアートワークの写真集をツイートしていた...? あれ、そうだったんですか!
――説明をすると、パッション・ピットの2作目『Gossamer』のジャケの元ネタになった『ザ・ハート・ランド』(マーク・ボスウィック)という写真集があって、その写真をTwitterに上げたら、海さんがリプライをくれたんです。
Passion Pit - Constant Conversations
海 もともとパッション・ピットの大ファンで、当時まったく面識のないTwitterのフォロワーさんが写真集のことをツイートしていたので、「それどこで手に入るんですか?」と訊いて。それ以来、お会いすることも連絡をとる機会もなかったのだけど、今こうしてインタビューを受けてるという(笑)。
高橋健介(G)&田口恵人(B)&濱田翼(Dr) えーっ!
――まずはそこから、前身バンドのSLOW BEACHを結成した経緯を教えてもらえますか。
海 僕と彼(田口)はもともと地元が同じで、学校はかぶっていなかったんですけど、お互い音楽をやっていたので認知し合っていたんです。大学に入ったころ、遊びでスタジオに入ったこともあったよね?
田口 うん。海くんの家に遊びに行ったこともあるし、一緒に色んな音楽を聴いたりしていて。
――仲のいい音楽仲間という感じですか?
海 いや、そんなにがっつりという感じではなかったですね。
田口 でも、僕は海くんの音楽をいいなと思っていたし、彼がソロ名義で『1980』を出した時に、「うわぁ、一緒にやりてぇ」と思って。それで僕の方から誘ったのがSLOW BEACHの始まりでした。僕らは2人とも(湘南などベイエリアにほど近い)鎌倉の人間だし、もともとチルウェイヴが好きで……。
Washed Out - Feel It All Around
海 彼(田口)は僕よりもブラック・ミュージック寄りの人間だったので、トロピカルでチルなサウンドと黒っぽさが混ざり合った、トロ・イ・モワみたいな音楽をやりたいと思って始めたのがSLOW BEACHでした。
――インディ・シーンでもちょうどその頃、チルウェイヴ以降の音楽が徐々にブラック・ミュージックと結びついて、R&Bやディスコ/ファンクっぽい方向に向かっていましたね。
Blood Orange - You're Not Good Enough
海 はい。ただ、当時、日本でそういった音を鳴らしている人はまだ少なかったので、やるなら今かなと思って。
give me wallets - Stay With Me
田口 それで最初は色んな人がライヴのサポートをしてくれたんですけど、その過程で2人(健介&濱田)が入ることになったんです。
濱田 僕と健介は同じタイミングでサポート・メンバーとして入って、同時に正式メンバーになりました。僕の場合は一度サポート募集に応募したんですけど、最初は断られてしまったんです。それからしばらくして「やっぱり叩いてみませんか?」という連絡をもらって、一緒にやることになりました。
海 つばたん(濱田)は確か、応募してくれた時のTwitterアカウント名が“渚のつばたん”だったんですよ。それで……「この人本当に大丈夫かな」って(笑)。
全員 (笑)。
濱田 いや、まだSLOW BEACHに加入する前だったから“渚”はついてなかったはず。
海 ビーチだから“渚”のつばたんで、今はLUCKY TAPESだから“ラッキー”つばたん?……変なの(笑)。
――ギターの健介さんとはどうやって知り合ったんですか?
田口 健介は僕の高校の後輩だったんです。SLOW BEACHの初期のライヴも観に来てくれてたんですよ。
健介 だから結構長い付き合いで。でも海くんと知り合ったのはSLOW BEACHが始まってからですね。
――音楽的に言うと、今のメンバーはどんな4人の集まりだと言えそうですか。
海 それぞれ好きな音楽が微妙に異なるので、僕はそれらをポップにまとめるのが自分の役割だと思っています。色々聴くけど、結局はポップスが好きなので!
濱田 それはみんな共通してるよね。あくまでポップなものにしようっていうのはバンドとして最初に立てたテーマでもあって。
田口 うん。幅の狭い音楽はやりたくないっていうか。
濱田 マニアックなものを落とし込んでもいいけど、ポップスとしてはブレない。そういうことはメンバー全員が目指しているものだと思いますね。
――その中でも、音楽的な趣向の違いを挙げてもらうことは出来ますか?
田口 僕はソウル/ファンクとか、アシッド・ジャズとか。
濱田 彼は聴いたままなんです(笑)。プレイにそのまま出てる。それから、自分の場合はブラック・ミュージックの中ではジャズとかモータウンとかが好きですね。あまりこのバンドに落とし込めるような感じではないんで、バランスを見つつやってます。あと、ロックとかも普通に好きです。
海 確かに、つばたんは一番ロック寄りかも。でも一緒にやるようになってから叩き方とかを、バンド(の音楽性)に寄せてきてくれているんですよ。
――そうして全員がSLOW BEACHになったわけですが、バンドは解散してしまいます。
海 それぞれの進む方向がいったん別を向いたのが一番の要因ですね。健ちゃんは就職活動も始まって、内定を貰っていたり。
濱田 そういうこともあったし、このままチルウェイヴみたいな音楽性で行くのかについても思うところがあったし。みんなにとっての色んな分岐点が、ちょうどそのタイミングで重なったんですよ。音楽だけではなくて、色んな要因があってのことだったんです。
――ところが、結局は同じメンバーで音楽性は全く異なる新バンドLUCKY TAPESを結成することになるわけですが、これはどんな風に起こった出来事だったんですか?
海 同じことをやっても意味はない、というのが前提にあって。SLOW BEACH解散後に三人(高橋海、田口、濱田)で集まった時に、マイケル・ジャクソンの“Love Never Felt So Good”(死後に彼のヴォーカルを使って再構築されたアルバム『Xscape』の先行シングル。83年にポール・アンカと制作するも録音されていなかった)が最高だという話で盛り上がったんですよ。 こんな感じの、チルウェイブよりもっと“輪郭のある音楽”をやりたいねって話になって、気付いたら数日後にはスタジオに入っていました。
Michael Jackson - Love Never Felt so Good
――エコーやリバーブで歌や演奏を隠したりしない音楽、ということですか。
海 そうですね。健ちゃんは就職活動をしていたので、はじめは3人で結成して、当時はサポートを入れずに3人だけで活動しようとしていました(笑)。
濱田 もっとベン・フォールズ・ファイヴっぽい、ピアノ・トリオみたいな感じでしたね。
田口 ところが今は(ライヴでは)10人編成でもやってるっていう……。
海 ほんとだよね、約3倍(笑)。
濱田 やっぱり3ピースだと、どうしてもパワー・プレイに走っちゃうんですよね。音圧も出さなきゃいけないとなると、繊細な音を表現することは難しいので。
――とにかく、「こういうバンドをしよう」という感じで再集結したのではなくて、「また集まったらたまたま新バンドになった」という感じだったんですね。
海 新宿のジャーナル・スタンダードのハンバーガー屋さん(J.S. BURGERS CAFE 新宿店)で話をしたんですよ。
田口 懐かしいね。
海 それから第一弾として“Peace and Magic”が生まれました。当時は3ピースだったので、音源よりもっとゴリゴリしたアレンジで。後になって今のメロウな感じに落ち着いたんですけど、その新しいアレンジには、ギターが不可欠で。それから健ちゃんが内定を蹴って戻ってきてくれて現在の4人編成となりました。
――当時、揃ってあの曲に魅力を感じたのはなぜだったんでしょうね?
濱田 たぶん、もともとそういうことがやりたかったんだと思うんです。でもそれまでは発想自体がなくて、あのタイミングで初めて気づいたんです。「僕らがずっとやりたかったのはこういうことだったのかもな」って。
田口 それに、ちょうどシックのナイル・ロジャースがダフト・パンクの“Get Lucky”に参加したりしていて、海外で売れてる音楽が自分の好きな音楽になってきてる、という実感もあって(“Get Lucky”は実際にライヴでカヴァー)。そこにマイケルのアルバムも出て、黒い音楽にポップスのメロディを乗せる、みたいなものが日本でも受け入れられるんじゃないかな、と感じたりもしました。
Daft Punk - Get Lucky (The Grammy 2014)
――時代の流れとメンバーの興味がうまく合って、「こういうことをやってもいいんだ」という気持ちになれた、と。
濱田 そうそう。それこそ、彼(田口)が言った通りですね。
ディズニーランドとかテーマパークみたいなことがしたいんです
ファンタジーというより……エンターテインメントというか
そういう非日常を表現できたら嬉しい
――4月にリリースされたデビュー・シングル“Touch!”は、海さんがもとになる曲を作って、それをみんなに聞かせて……という形で制作していったんですか?
海 いえ、この曲はギターの健ちゃんが、最初にイントロのカッティングギターを持ってきて、それを僕が広げた感じですね。最近はそういう流れで作ることが多くて。健ちゃんがラフを持ってきて、それを自分が広げる、みたいな。ちょうどこの間、夏にリリース予定のアルバムの曲作りを終えたところなんですけど、その収録曲もほとんどこの形で作りました。
田口 (最初のフレーズが上がった時点で)純粋に「カッコいい」って思ったよね。
海 うん。でもちょうどその頃、締切が迫ってるのにギリギリまで悩んでいて、自分では何がいいのか分からない状態になっていたんです。だから僕の中では「健ちゃんから良さげなフレーズが届いたし、これで行くしかない」って部分もあって(笑)。
濱田 確かに、選択肢はなかったな(笑)。
田口 まぁでも、僕らが一番ビビッと来るのってやっぱり海くんがメロディを入れた時なんですよね。最初に健介から来たフレーズももちろんかっこいいんですけど、最終的にゴー・サインを出すか出さないか、というのはそこで決まることが多いんで。
健介 “Touch!”の時は僕も海くんの家に行って作業して……翌朝には海くんがメロディを完成させていました。
田口 寝て起きたらBメロが出来てた、みたいな感じだったよね(笑)
海 2週間後に締切だったのに、まだメロディも歌詞も出来てなかったので……みんなが寝てる横で作業をしていました。
――自分たちでは、他の曲と比べてどんな違いを感じていますか?
濱田 やっぱり、ブラック・ミュージックに“ポップス”を融合させるってことに、もっと寄せて行った曲ではあるんじゃない?
海 シングルカットされる曲なので、明るさはとくに意識しました。
――他と比べて、王道のポップス的な要素が強い曲ですよね。Lucky Tapesの楽曲には、もっと70~80年代のファンク/ディスコ/ソウルっぽい曲も沢山あると思うので。
濱田 そういうことを、これまでで一番表現出来たのが“Touch!”だと思うんです。「聴きやすいものが売れる」ってこととも違うんですけど、多くの人に聴いてもらったり、ずっと聴いてもらえる“本当のポップスをやる”って考えた時に、結果こうなったんじゃないかなって。
――歌詞についてはどうですか?
海 歌詞は基本、単語の響きで選んでいて、深い意味は込めていないんですよ。そもそも自分が音楽を聴く時に、歌詞よりは音で聴くという部分が大きいし、音が気持ち良ければいい曲だなと思えるので。
田口 後で見るとちゃんと歌詞にはなってるんですけどね。でも、音の気持ちよさを大切にしてるところがある。「ここの歌詞がやばい」とか、誰も言ったことないよね?
海 ない(笑)。
田口 だから、自分たちが一番大切にしてるのはそういう部分じゃないというか。洋楽だと全ての歌詞の意味は分からなかったりするし、純粋に音として捉えてる部分ってあると思うんですよね。
――そういう意味で、魅力を感じるアーティストはいますか?
田口 たとえばコリーヌ・ベイリー・レイ。僕はすごく好きなんです。声もいいし、ミックスも気持ちいい。彼女より歌が上手い人はいっぱいいると思うけど、あの人だけの魅力があるというか。
Corinne Bailey Rae - Paris Nights/ New York Mornings
濱田 僕はジャズですけど……ジム・ホールの青盤(『Concierto』)ってあるじゃないですか?あの一番有名なアルバム。スティーヴ・ガッドが参加していて、ガッドは最初ライド(シンバル)レガートしかしてないんですけど、それでも聴いた瞬間に彼だと分かるものになっていて衝撃を受けました。
Jim Hall - You'd Be So Nice To Come Home To
海 僕はアンノウン・モータル・オーケストラのセカンド。ハイファイな時代にやるロウファイなサウンドが堪らない。 粗い音の粒が詰まっている、あのコンプ感がすごく好きで。アルバム通して楽曲もいいけど、音自体が気持ちいい。LUCKY TAPESの音楽性とは違ってサイケですけどね(笑)。
Unknown Mortal Orchestra - From The Sun
健介 僕はペトロールズの長岡さん(東京事変でギターを担当する浮雲のこと)ですね。あとは、韻シストのギターとかも。結構、クリーン・ギターに耳が行っちゃうんですよ。
韻シスト - ~360°Premium LIVE~ Neighborhood
――“Touch!”のシングルにはAvec Avecさん(Sugar’s Campaign)もリミックスで参加しています。これはどういう経緯で実現したものだったんでしょう?
海 Avec Avecさんはソロではまだアルバムを出していませんが、Soundcloudやフリーダウンロードの作品をひたすら聴き漁っていたり、他のアーティストのプロデュース・ワークも買ったりしていて、数年前から好きでリスペクトしていたところ、熱いオファーの上にようやく実現したんです。
――ブラザータイガー“Lovers”のリミックスとか、好きそうですよね。
海 あれは最高ですね! あの曲を手に入れるために国内盤を買いました(笑)。
Brothertiger - Lovers (Avec Avec Remix)
――さて、色々話を聞かせてもらっても思ったんですが、SLOW BEACHの頃はチルウェイヴ的な「逃避」というキーワードで語られることが多かったものの、LUCKY TAPESになってからは、みなさんの音楽観が変化しているように感じられるんです。相変わらず非日常的な空間に連れていってくれる音楽ではあるものの、そのファンタジーの種類が大きく変わっているというか。
全員 ああー、なるほど。
海 まぁ、僕ら自身はそこまで考えているわけではないんですけどね(笑)。
濱田 でもたぶん、「逃避」って言われることに対して、しっくり来てない気持ちはずっとあったんですよ。自分たちはそれよりも、多幸感みたいなものを大切にしてて。
田口 うん、だから実は最初から逃避してるつもりではなかったというか。インタビューで「逃避」の話になることもあったんですけど、どこか違和感があって。「逃避」って、マイナスなイメージじゃないですか? でも、僕らがやりたいのはそういうことじゃない。多幸感って言った方がプラスのイメージがあって、しっくりきますね。
濱田 そもそも海くんの作る音楽ってそこが魅力的だと思うんですよね。だから僕らは、「お客さんに極上の多幸感を提供する」っていう勝手な使命を自分たちに課していて(笑)。それが今は、バンドとしてより表現出来てきているってことなんだと思います。
海 (会話から一度外れてここで戻ってくる)何の話?
田口 逃避の話。
海 ああ、SLOW BEACHはライヴもしていない状態で、宅録から始めたので……確かに、最初の頃はリゾート地だったり、海や西海岸だったりを自分の部屋からイメージして、現実逃避するような部分があったと思います。でも、そうやって始まったものがバンドになり、都内でライヴをするようになって……徐々に変わっていったんだと思います。ほとんど部屋に引きこもって音楽を作っていたのが、作った音楽を通して、ライブなどに呼ばれるようになり、そうやって初めて都会を知っていったんです。
――チルウェイヴの人たちと同じですね。あの人たちも初期は宅録で、その後バンド編成でのライヴを経験して音楽性が変わっていった部分があったので。
Washed Out - It All Feels Right
海 へええ、まったく一緒ですね(笑)。でもこのLUCKY TAPESでは、言ってみればディズニーランドとかテーマパークみたいなことがしたいんです。ファンタジーというより……何だろう、エンターテインメント。そういう非日常を表現できたら嬉しいです。
濱田 「圧倒的なショウを観たな……!」って感じとかね。
田口 うん、非日常っていう言葉は一番しっくりくる。いい言葉見つけたかもね。
――そうして“Touch!”は、みなさんが王道のポップ・ミュージックに最も近づいた曲になった、ということですね。アルバムも控えていますが、今後どんな活動をしていきたいと思っていますか。
海 ポップを貫くということですね。いつの時代でも、どんな音楽が流行っても、ポップを貫く。普通のことしか言ってないですけど(笑)。流行っている音楽とか売れる音楽みたいなものに流されずに、やりたいことをやっていきたいです。
濱田 そういう環境にいたいよね。自分たちがいいと思ったものをちゃんとやれるような。
海 うん、そうやって好きな音楽を作り続けていきたい!
MVが公開された後に
別の方から「あのコーラスはかほさんがやってるんですよね?」
「歌手デビューしませんか?」ってお話もいただいたんです(笑)。
そんな彼らの今を象徴しているのが、トップローダーの“Dancing In The Moonlight”を雛型にした“Touch!”のMV。ここからはコーラス役を演じた瀬戸かほさんも加えた、MV制作秘話をどうぞ。
Toploader - Dancing in the Moonlight
――今回、かほさんが“Touch!”のMVに出演することになったのは、メンバーたっての希望だったそうですね。
健介 僕はもともとファンなので、「かほさんに出てほしいな」って言ってたんですよ。
田口 僕も健ちゃんが好きなのを知ってて、画像を見せてもらっていました。
濱田 健介の携帯、普通にかほさんの画像が入ってますからね(笑)。
――(笑)かほさんはLUCKY TAPESのイメージってどんなものだったんでしょう?
瀬戸かほ オシャレな音楽だから、みんなすごい都会の人かと思ってたんですけど……。
健介 あまりオシャレじゃなかった(笑)。
かほ いえいえいえ(笑)。馴染みやすくて、いい人たちでほんとによかったなって。
――撮影当日、スタジオではどんな話をしていたんですか?
濱田 最初は「めっちゃファンなんです」みたいな話をしてました。
健介 恥ずかしい(笑)。
海 あとは、MVに関する事務的な話になってたよね。
濱田 最初はちょっと緊張してたし(笑)。かほさんは僕らの曲も既に聴いてくださってたんで、カット割りとかの話を進めていきました。
――ハウス・パーティーという設定には、何か元になるアイディアがあったんですか?
濱田 海くんがトップローダーのカヴァー曲の……。
全員 “Dancing In The Moonlight”!(キング・ハーベストの73年曲のカヴァー。00年作『Onka’s Big Moka』に収録)。
濱田 あのイメージが近いって言ってたんですよ。
海 そうそう、あの雰囲気を出したかったんです。
――ああ、それはかなり分かりやすいです。バンドをそういうイメージで見てほしい、という気持ちもありましたか?
濱田 それは絶対あったと思います。パーティー・バンドではないですけど、ホーム・パーティーとかで実際にかけてもらったらすごく嬉しいと思うので。
――他にも、何か考えていたアイディアはあったんでしょうか。
海 他にもいっぱいあったんですけど……結局時間が足りなかったよね。
濱田 あれもやりたい、これもやりたいって言ってたんですけど、曲の尺に入りきらなくて。他には(所属レーベルRallyeのオーナー)近越さんがパジャマを着て隣に住むおじさん役をやって、最初は「うるせえなぁ」みたいな感じなんですけど、最終的には楽しくなって一緒に踊ってる、みたいな案とか(笑)。もしかしたら案自体にNGが出てたのかもしれないですけど。
海 あと、紙吹雪もやりたくて実際に作ってもらったんです。でも当日やってみたら、映りが難しくて……結局ボツになっちゃいました(笑)。
濱田 だから、実は一部のカットで足に紙吹雪が映ってるんですよ。
かほ ふふふ。
健介 あとは、ずっと弾き続けるのが本当に大変でしたね。
田口 弾いてるふりしながら踊ったりね。普段より動きを大きく見せなきゃいけなかったし、僕らはそういう部分も初めての経験だったので大変でした。
――かほさんは他のMV出演時と比べて、“Touch!”の現場はどうでしたか?
かほ 何か、一番ほのぼのしてたなぁと思います。だから、すごく楽しかったんですよ。仕事っぽくなかったというか(笑)。
全員 (笑)。
――特にお気に入りのシーンはありますか?
海 一番最初の華歩さんの……。
田口&健介&濱田 (綺麗に声が揃う)ああー!
濱田 満場一致でかほさんのシーン。
かほ ちょっと、自分たちのこと言ってくださいよ(笑)。じゃあ私は、メンバーのみなさんがご飯を食べてるシーン。あそこカワイイなぁ、って思うんですよね。
濱田 僕らは演技するのが初めてだったので、ああいうところも大変でした。「はい、今からピザを食べます」「華歩ちゃんが持ってくるから、楽しそうにやって」って言われて。それまで普通にしてるのに「はい、スタート」「うおぉおお!!!」……みたいな(笑)。
―― 一方かほさんも、このMVではバンドのコーラス役を演じました(実際のコーラスはsugar meが担当)。
かほ 実はMVが公開された後に別の方から「あのコーラスはかほさんがやってるんですよね? 歌手デビューしませんか?」ってお話もいただいたんです(笑)。それで、「いえ、違うんです」って説明して……。「わぁ、やばいやばい」って。
健介 すごい話だ。
濱田 でも、本当に歌ってる感じが出てたってことだよね。
――もう一度このメンバーでMVを撮るなら、どんなことをやってみたいですか?
濱田 個人的なことを言わせてもらうと、野球……。
――野球?
田口 ずっと言ってる……。
――なんで野球……。
濱田 僕はもともと野球が好きなんですけど、最近全然出来ていないので……(笑)。かほさんがピッチャーとかで。すごい個人的な案で申しわけないんですけど(笑)。
――MV撮影中にやりたかった野球も一緒にやっちゃおう、ということですね(笑)。
田口 僕は海沿いをクルマで走りたいですね。
健介 ずるいなー、そういうの。かほさんが彼女役、みたいなやつね。僕は、かほさんが悪女役っていうのをやってみたいです。それで「みんな騙される」みたいな。
濱田 四股(笑)。
かほ めっちゃ悪い女じゃないですか(笑)。私は、“Touch!”の撮影中もみなさん仲よさそうにしてたので、今度は孤独な感じの、触れ合わないLUCKY TAPESも見てみたいです。ちょっとすれ違っちゃう感じでも面白いかな、って。
海 僕はもう言われちゃったんですけど、健ちゃんとかほさんが恋人役で……。
濱田 健介が喜ぶように考えてくれてる(笑)。
かほ みんないい人(笑)。
健介 (意気揚々と)それ、やりましょう。
濱田 (笑)で、実は四股されてたみたいなね。そうやってみんなの案を全部回収していくという。
――じゃあ、そのうちのひとりが野球選手ですね。
全員 はははは(笑)。